歩いて楽しむ酒⑪ ワイン王国やまがた

実は歴史ある日本ワイン産地である山形県のワイナリーを巡ります。

メインビジュアル:歩いて楽しむ酒⑪ ワイン王国やまがた
日本のワインというと山梨、北海道、長野を思い浮かべる方が多いと思います、山形はこれらの地に勝るとも劣らないワイン産地です。山あいの稲作適地が少ないところでは、早くからブドウやサクランボなどの果樹栽培が盛んになりました。本格的なワインづくりは明治期にはスタートしており、サントリーやサントネージュ(アサヒビール)など大手メーカーにも良質なブドウを供給してきました。今、山形は上質のワイン産地として新たな一歩を踏み出しています。

赤湯温泉はワインの町 大浦葡萄酒

山形新幹線「赤湯駅」のある南陽市には現在4つのワイナリーがあります。酒井ワイナリー(明治25年創業)、大浦葡萄酒(昭和14年創業)、佐藤ぶどう酒(昭和15年創業)、須藤ぶどう酒工場(大正10年創業)です。いずれも小規模でブドウ栽培からワインづくりまで手作業でおこなっています。

大浦葡萄酒は赤湯駅から徒歩で15分ほど、4月初めに訪ねると社長の大浦宏夫さんが「ワインの醸造は終わっているので稼働していませんが、よかったら」と工場を案内してくれました。コンパクトな工場ですが小規模ではあってもブドウ果汁を酸化させずにジュースを搾るマシーンを導入するなど、品質の向上への投資は手を抜きません。
赤湯大浦葡萄酒
大浦葡萄酒は幹線道路沿いにあり駐車場を備えている
大浦葡萄酒売店
平屋のショップはほぼ毎日営業
ブドウ果汁圧搾マシーン
ブドウ果汁をバルーンで圧搾するマシーン
直営ショップの奥にはワインを熟成させるセラーがあり、マスカットベーリーA種やブラッククイーン種など川上善兵衛(岩の原葡萄園の創業者・日本ワインブドウの父といわれる)が開発したブドウのワインと、甲州種やメルロー種のワインが樽の中で眠っていました。

ブドウ品種の選択や栽培方法、醸造方法にも工夫を重ねており、ワインの種類は豊富、壁一面に様々な商品が並んでいます。ショップでは好きなワインを試飲でき、気に入ったものを選べるのはうれしいところ。ネット販売は便利ですが試飲だけはできません。年末年始とお盆以外は毎日営業しているそうなので、お近くにお出かけの際はぜひ立ち寄ってみてください。

大浦さんのワインの品質の高さは、数々のコンテストでの入賞歴を見れば一目瞭然でしょう。「日本ワインコンクール」や「日本で飲もう最高のワイン」などで複数のワインが受賞しています。

そして、大浦葡萄酒から酒井ワイナリー、佐藤ぶどう酒までは徒歩で10分ほどです。3つのワイナリーを歩いて訪ねられるのは、ワイン好きにはうれしいことです。ぜひ一度足を運んでみてください。今年は後述のとおり南陽市と上山市を結ぶワイナリー巡りの巡回バスが走ります。
 
店内のセラー
店内のセラー。樽を見ているだけで楽しい
ショップの陳列
ブドウ品種とワインの豊富なバリエーションを楽しめる
アワード受賞紹介ポスター
数々のアワードを受賞。山形のワインを代表するワイナリーだ
アイススウィートナイアガラプラチナ賞受賞
ナイアガラ種の極甘口ワインは最高の評価を受けた

日本ワインのリードしつづけるタケダワイナリー

次の目的地である上山(かみのやま)は南陽から車で30分ほどです。城下町で山の頂に城があり、毎年、麓に広がる公園周辺で山形県内のワイナリーが集まるワインフェス「やまがたワインバルinかみのやま温泉」が開催されてにぎわいます。今年は6月8日(土)でチケットは絶賛発売中、3000円でワインチケット10枚・ワイングラス・ホルダー付と、とてもお得で楽しいイベントです。
 
「やまがたワインバルinかみのやま温泉」会場の様子
「やまがたワインバルinかみのやま温泉」会場の様子
さらに、6/9(日)には上山と南陽のワイナリーを巡回バスで巡る「ワインツーリズムやまがた」がおこなわれます。こちらは参加費5000円だそう。この2つのイベントに参加すれば、やまがたワインの魅力にはまること間違いなしです。

このように話題豊富な山形のワイナリーですが、ずっと本格的なワインづくりを牽引してきたのがタケダワイナリーです。こちらは常時見学を受け入れており、ホームページから予約できます。
タケダワイナリーの本社
タケダワイナリーの本社。周りはブドウ畑ばかり
見学はブドウ畑から始まりました。ワイナリーの周りにはブドウ畑が広がっています。すぐ目の前の畑に植えられていたのは垣根仕立てのシャルドネ種です。タケダワイナリーは甘味果実酒がばかりだった時代からカベルネ・ソーヴィニヨン種やシャルドネ種など欧州系のワイン専用品種の栽培に取り組んできました。試行錯誤と土壌改良を重ねて1990年頃にようやくこうした品種を使ったワインの発売にこぎつけました。目の前にあるのは当時からのブドウの木です。
 
ワイナリーの方が案内してくれている
寒い中ていねいに畑を案内してくださいました
ブドウ畑
これがタケダワイナリーのシャルドネ種のブドウ
畑からワイナリーに戻り、醸造棟、地下の貯蔵庫を見学してショップに戻ります。もちろん試飲してワインを選べます。ただ、残念なことに昨今の日本ワイン人気の高まりで、上級品の多くが品切れでした。畑を拓いてブドウ栽培から始まるワインづくりは、急な増産できません。需給バランスが改善するまでもう少し時間がかかりそうです。
 
地下貯蔵庫
スロープを降りて地下の貯蔵庫へ
ショップ
ショップでテイスティング
一升瓶ワイン
地元で愛され続けてきた一升瓶ワイン
※記事の情報は2019年5月23日時点のものです。
 

  

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