すごい梅酒みつけました(和歌山県みなべ町)< 歩いて楽しむ酒⑬> 

梅干し、梅酒に梅ジュース。今年も梅仕事の季節がやって来ました。「さけ通信」がとりあげるのはもちろん梅酒、梅の実をベーススピリッツに漬け込むだけのシンプルなリキュールです。日本一の梅産地である和歌山県みなべ町の梅農家を訪ねると、そこには産地ならではの極上の梅酒がありました。

メインビジュアル:すごい梅酒みつけました(和歌山県みなべ町)< 歩いて楽しむ酒⑬> 

梅農家の跡取り息子がつくる梅酒

紀伊半島の南端に近いみなべ町までは大阪から特急で2時間半、東京からは空路南紀白浜空港に飛ぶとそこから車で30分ほど。少々遠いのですが海の幸と山の幸を同時に満喫できる贅沢なところ、熊野古道歩きの拠点のひとつとしても知られています。

3月7日にみなべ町を訪ね、梅を栽培する有本農園の有本陽平さんに町を案内していただきました。有本さんは梅を栽培するだけでなく、酒造免許をもち梅酒を製造販売しています。彼の梅酒は自身が育てた梅が枝についたまま完熟するのをじっくり待ち、桃のように甘い香りが出るようになってから手摘みしたものを使います。スーパーや八百屋に梅酒用として並んでいる青梅は、店頭に並べても日持ちするよう若いうちに収穫したもの。梅栽培農家ならではの、梅のポテンシャルを最大限に引き出したいという彼のこだわりの現れです。

当日はJRみなべの駅で待ち合わせ梅林に向かいました。実はみなべ梅の花の見ごろは2月、たくさんの梅が咲き誇っていた南部梅林は数日前に閉園していました。それでも地元をよく知る有本さんは車を走らせ、梅の花がありそうなところを探してくれたというわけです。
南部駅
長閑なたたずまいのJR南部駅。ICパスカードが使えました
梅畑
梅畑が点在する地区を車で走ると、山の北側にはまだ花をつけていました
梅畑遠景
高台から梅畑を見下ろす。このエリアは比較的新しく拓かれたところで作業のしやすい平坦な畑が広がっている

梅農家が梅干しの下ごしらえ

みなべ町うめ振興館の展示によると、日本一の梅の産地みなべ町の梅栽培は江戸期から盛んだったそうです。山が迫り稲作に向かない土地が多かったため、藩主が斜面などに梅を植えることを奨励、梅を植えた畑の税負担を軽減したため梅栽培が広がります。農家は梅干しに加工し、自家用だけでなく、良質なものを選抜して江戸に出荷し、紀伊田辺産の梅干しは評判になっていきました。

現在も農家が梅干しづくりを担うのは変わっていません。収穫した梅を干して塩漬けするところまでを農家が担当し、梅干し加工業者に引き渡します。
梅の塩漬け作業場
梅農家のハウスは梅干しの塩漬け工程の作業場だ
昔ながらの日本家屋が有本農園の母屋
昔ながらの日本家屋が有本農園の母屋。もともとは有本さんのご自宅だった

南高梅で変わった梅干し

いま、みなべ町産の梅干しは、大粒で肉厚な「南高梅」を使います。この品種はみなべ町で生まれ、全国にその名をとどろかせたブランド梅です。かつて梅の価値を高めて農家の暮らしを豊かにしようとする取り組みがあり、優良な梅の母樹の選抜がおこなわれました。5年の歳月をかけて選抜を繰り返し、最良の梅として特定されたのが南高梅です。研究に協力した和歌山県立南部高校と、母樹を栽培していた高田貞楠氏の姓から一字をとって「南高梅」命名、1965年(昭和40年)に種苗名称登録されました。

この南高梅が登場して梅干しは一変します。それまですっぱく塩辛かった梅干しは保存食として、梅和えやおにぎりの具材に用いられていました。ミネラルが豊富で疲労回復効果があり、食欲を増進させる働きから重宝されてきました。ところが南高梅は大粒で皮が薄く肉厚、さらに実が柔らかいためうま味をたっぷり含ませられます。ふっくらジューシーに仕上げた南高梅の梅干しは、高級梅干しとして大ヒットします。開封後は冷蔵保存が当たり前になり、南高梅以前と以後で梅干しはまったく別のものになったと言ってもいいほどの変わりようです。

梅酒の梅酢漬けチキンのBBQ

有本農園さんでは有本さんから「BBQで腹拵えしましょう」とランチのお誘いです。一口大の鶏もも肉をボウルに入れて梅酢(梅干しをつけた時に出る上澄み液)を回しかけ、軽く手で揉みます。梅酢の酸味と旨味が鶏肉に浸み込んで、焼き上げるとなかなか美味でした。みなべではBBQといえばこのスタイルが定番とのこと。ぜひ、皆さんもお試しください。さっぱりして梅酒の肴にぴったりです。
梅酢で鶏肉に下味をつけ
梅酢で鶏肉に下味をつけるのがみなべ流
有本陽平さん
有本陽平さんは元高校球児で有本農園の跡取り息子。BBQはお手のもの。お嫁さんを絶賛募集中

超限定 今しか手に入らない最高級梅酒「プラミティ」

有本さんの梅酒工房を見せてもらいました。梅酒づくりは梅の収穫時期だけで、あとは時々攪拌するくらいで、熟成をじっくり待ちます。2つ並んだホーロータンクのひとつは日本酒で漬けた梅酒、もう一方は甲類焼酎35度で漬けたもの。梅そのものの味わいを出したいので、ウイスキーやブランデーなど、ベーススピリッツの個性が強いものは使っていません。梅の品質に徹底的にこだわる有本さんらしい梅酒づくりのポリシーではないでしょうか。
梅酒タンク
梅酒は成人男性の肩くらいの高さのタンクで熟成を待つ
昨年の梅酒
昨年漬けた梅酒。まだ梅の実を引き上げていない

有本さんの梅酒は「プラミティ(Plumity)」と名付けられ、公式サイト(※1)から購入できます。2種類あり「プラミティ・ブラック」は甲類焼酎でつけたもの。720mlで3000円(税別・送料別)。吟醸酒で漬けた「同ホワイト」は甘さ控えめで720ml4000円(税別・送料別)です。有本さんが一人で収穫し梅酒をつくります。ベストのタイミングで収穫できる梅の量に限りがあり、製造本数はわずかです。みなべ町の木なり完熟南高梅で仕込んだ厳選梅酒を、ぜひ一度お試しください。
有本さんのプレミテ
有本陽平さん渾身の梅酒「プラミティ」は2種類
※1 有本農園公式サイト

※記事の情報は2019年6月19日時点のものです。
 

   

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