酒好きほぼ100人に聞いた家飲みビール事情。「減税後はビールが増えた」が2割

昨年10月にビールは350mlあたり7円減税、新ジャンルは9.8円増税となりました。その後は減税されたビールの動きが好調といわれています。そこで酒好きの方々に、この一年間の家飲みでのビール飲用の変化を尋ねました。

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ビール類酒税率改正を85%が認知

最初にビール類の酒税率改正の認知状況を見てみましょう。ビール類はビール、発泡酒、新ジャンル(第3のビール)は2023年10月と2026年10月の酒税率の改正で一本化されます。右の改正スケジュールチャートを示したうえで、どの程度知っているかを聞きました。
酒税率改正スケジュール

「よく知っている」が31%、「少し知っている」が54%で、85%がビール類の酒税率が一本化されることを認知しています。「まったく知らない」という回答はわずか2%しかなくこのテーマへの関心の高さがうかがわれます。
ビール類税率改正の認知

18%が自宅でのビール飲用機会が増加

次に昨年の10月に最初のビール類の酒税率が改正されてから、ビール類の飲み方がどう変わったかを見てみましょう。昨秋の改正ではビールと新ジャンルの税額差は16.2円縮まりました。コンビニエンスストアでの売価はビールが350ml缶226円前後から219円前後に、新ジャンルは150円前後から160円前後になり、価格差は75円程度から60円程度に変わりました。単品で見るとわずかな価格差に見えますが、24本入りのケースで買うと、ビールは税率改正前より168円安くなり、新ジャンルは240円高くなりました。また、ほぼ新ジャンルと同じ価格で販売されていた缶チューハイは税率の変更がなく、価格は変わっていません。
ビール類税率改正後の自宅での飲用機会の増減
「あなたは昨年10月にビールが減税されてから、ご自宅でビールを飲む機会は増えましたか?」と一択で聞いたところ、「変わらない」が8割だったものの「増えた」は18%にのぼり、「減った」は3%です。自宅でのビールの飲用機会は増加したことがわかります。

同様に新ジャンルと缶チューハイについて聞くと、増税となった新ジャンルは「変わらない」が8割弱でしたが「減った(14%)」が「増えた(8%)」を大きく上回りました。税額が変わらなかった缶チューハイは「増えた」が18%で、ビールと同水準です。ただし「減った」が5%あり、ビールよりも多くなっています。

この1年で強まった家飲みのビールに新しさを求める気分

昨秋の税率改正以降のビール類の飲み方や買い方の変化を聞いた質問では、「いろいろなビールを飲むようになった」と「新製品を積極的に試すようになった」の2つが上位に並び、飲み手がビール類の飲用に新しさを求めている様子が窺われます。
ビール類税率改正後の変化
プレミアムビールやクラフトビール、期間限定発売のビールを飲む機会が増えたという回答も上位にあがっており、コロナ禍で巣籠りが続いたことで、家飲みにメリハリをつけたり遊びを持ち込んだりしようとする気持ちが表れているのかもしれません。

そのほか糖質ゼロのビールやノンアルコールビールを飲む機会が増えたという声が1割前後見られます。
サントリーはこの秋に次々に期間限定ビールを投入
サントリーはこの秋に次々に期間限定ビールを投入

ビール類酒税率一本化後に主としてビールを飲む人が5割

では、2026年にビール類の酒税率が1本化された時、消費者のビール類の選択はどのように変わるのでしょうか。5年後に350ml缶でビールは約16円減税されて175円前後(税込み)で、新ジャンルは16円強増税されて150円前後(〃)で販売されると予想されることを伝えたうえで、ビール類をどのように選ぶかを選択してもらいました。
ビール類税率一本化後の飲用予測
もっとも多かったのは「ビールしか飲まなくなる」の22%、そして「ビールと新ジャンルを同じくらい飲む」と「主としてビールを飲むが新ジャンルを飲む」が続きます。これらはビールの飲用が半分以上を占めると考えられる回答で、合計すると53%と5割を超えます。

価格が上がる新ジャンルですが、ビール類としてはもっとも安価であり続けます。3%ながら「新ジャンルしか飲まない」という声があり、「主として新ジャンルを飲むがビールも飲む」も13%です。手頃なビール類として大きな市場を形成し続けると予想されます。

ビール類と競合すると言われる缶チューハイは「缶チューハイを飲みビール類は飲まない」と「主として缶チューハイを飲むがビールも飲む」で1割弱です。ビール類の税率が一本化されることで、缶チューハイが急成長することはないのではないでしょうか。

回答者は酒類市場を動かす酒ヘビーユーザー

ここで今回の回答者のプロフィールを確認します。 回答者は週に4~5日以上飲む方が8割を占めています。自宅でもっともよく飲む酒(頻度)は、ビール類(ビール・発泡酒・新ジャンルの計)が38%を占めてトップ、2位はワインで16%、3位は清酒の15%でした。もちろんビール類はほとんどの方が週に1回以上飲んでいます。回答者は飲酒頻度が高いだけでなく、自宅でさまざまな酒を楽しむ酒の熟達者たちです。

ちなみにOECD(経済協力開発機構)は日本では酒類消費量の多い上位2割のユーザーが7割を消費していると試算しています。今回の回答者は酒量の多い上位2割に近いと思われ、ビール類の消費動向に大きな影響を与える層の動向を示していると考えられます。
自宅で最も飲む酒

酒熟練者がビールをおいしく飲む4つのこだわり

最後に回答者のコメントから酒好き達のビールをおいしく飲むためのこだわりを紹介しましょう。たくさんのさまざまなご意見をお寄せいただきましたが、「つまみ・料理」「飲み方」「シチュエーション」「グラス」の4つに大別できます。

「つまみ・料理」については、肉、油脂、スパイシーがキーワードで、典型が唐揚げということになります。これらと無縁ながら人気のおつまみが枝豆でした。たとえば、「つまみにこだわる。魚介類ではなく、油を感じるもの。とんかつや餃子、肉野菜炒めなど」(男性・60代)や「喉が渇いたとき、肉料理と一緒に飲みたくなる」(男性・50代)、「不思議と枝豆によく合う」(男性・60代)というご意見です。
揚げものはビールのつまみの大定番
揚げものはビールのつまみの大定番
「飲み方」では「よく冷やす」と「必ずグラスに注いで飲む」が多く寄せられたほか、「ビールのタイプごとに適温で(何でもキンキンに冷やさない)」や「きれいな泡が立つように注ぐ」という声がありました。「グラスを冷やしたり、保冷タンブラーを使って冷えた状態で飲めるようにしている」(女性・50代)、「季節によって温度を変えます。夏はとにかく冷たく、秋は常温もありで、冬はまたキンキンに冷やします。春は何でもありで飲んでます。」(男性・50代)、「冷やしすぎない。特にプレミアムビールの類は冷やしすぎない方がコクが引き立つから」(女性・40代)などです。

「シチュエーション」はビールがおいしい場面を挙げたもので、「たっぷり汗をかいた後」「仕事などで何かやり遂げた後」「風呂上がり」のほか、「ビールだけは仲間がいないとおいしくない。他は一人で飲んでも楽しめる」(男性・70代)というコメントが印象的でした。

そして、もっとも意見が多かったのが「グラス」についてです。「ビールに合わせてグラスを選ぶ」や「ワイングラスのように香りがわかるグラスで飲む」「口当たりの薄いグラスを選ぶ」というコメントです。

グラスに関心を向けるコメントがたいへん多かったので、これまで訪ねたブルワリー(ビール醸造所)がどんなグラスで提供していたのか、写真を探してみました。グラス選びの参考にしていただければ幸いです。なお、現在も同じグラスを使用しているかは確認していません。
サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野ではピルスナーとエールを異なるグラスに注ぎ分けて提供
サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野ではピルスナーとエールを異なるグラスに注ぎ分けて提供
アサヒビール吹田工場(大阪府)。スーパードライは王道のスト
アサヒビール吹田工場(大阪府)。スーパードライは王道のストレートグラス。ブラックは口が広がる柔らかいフォルムのグラスで提供
名古屋駅に近いY.MARKET(左)は口に広がりのあるストレートタイプ、軽井沢近くのヤッホーブルーイング御代田醸造所(右)はパイントグラス
名古屋駅に近いY.MARKET(左)は口に広がりのあるストレートタイプ、軽井沢近くのヤッホーブルーイング御代田醸造所(右)はパイントグラス
ベアードブリューイング(静岡県)のブルワリーガーデン修善寺のフライト(飲み比べセット)は口が少しすぼまったグラス
ベアードブリューイング(静岡県)のブルワリーガーデン修善寺のフライト(飲み比べセット)は口が少しすぼまったグラス
イタリアのクラフトビールのパイオニア「バラデン」(ピエモンテ州)はオリジナルのTEKUグラス。このグラスは同社の創業者がデザインした
イタリアのクラフトビールのパイオニア「バラデン」(ピエモンテ州)はオリジナルのTEKUグラス。このグラスは同社の創業者がデザインした
【調査概要】
調査時期:2021年9月2日~9月8日
調査方法:インターネットアンケート
サンプル数:134人(お酒好きな人)


※記事の情報は2021年9月16日時点のものです。

  

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