2018.05.15
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イタリアの地方料理に学ぶ家飲み(2)

イタリアの地方料理に学ぶ家飲み(2)

意外に知られていませんが、イタリアはリンゴの生産量が欧州1位。そこから生まれるワイン「シードル」はクオリティーが高く、世界でも人気です。今回は家飲みの新たな可能性を広げるため、シードルの可能性を探ってみました。

イタリアの初夏の食卓を彩るスパークリング、スィドロ

イタリアは5月になればすっかり夏の陽気。比較的涼しい北部の高地でも、太陽が出れば、Tシャツでも汗ばむ暑さ。でもちょっと陰に入れば、涼しく乾いた風が火照った肌を冷やしてくれます。そんな過ごしやすい季節には、外にテーブルを出してのんびりと食事するのがイタリア流。その食卓には、やはりスパークリング・ワインがほしくなりますね。

 

イタリアのスパークリング・ワインといえば、やはり「プロセッコ(Prosecco)」が一番人気でしょう。ヴェネト産の辛口白のスパークリングです。同じ辛口白でも、高級スパークリングなら「フランチャコルタ(Franciacorta) 」。シャンパンと同じ製法のイタリアを代表するワインです。ほかにも、赤のスパークリングなら「ランブルスコ(Lambrusco) 」、ロゼのスパークリグなら「ブラケット(Brachetto)」、といったところがよく知られた名前だと思います。

 

しかしもう一つ、日本ではあまり知られていませんが、この時期に人気のスパークリング・ワインがあります。それは「スィドロ(Sidro)」。フランス語で「シードル」という、あのリンゴで作るワインです。温暖な気候に恵まれたイタリアも、アルプスの麓に位置する北の寒い地域ではブドウの栽培がままなりません。そんな冷涼な地域では、古くからリンゴが栽培され、スィドロが好んで飲まれてきました。

フランスのシードルはガレットとの相性が抜群

日本では「シードル」といえば、フランスものが有名です。フランスも事情は同じで、ブドウ栽培ができない冷涼な地域では、このシードル造りが盛んです。ブルターニュ地方、ノルマンディー地方が最大の産地として有名ですが、特にその名を知らしめたのは、世界遺産として有名な「モン・サン・ミシェル」でしょう。海に浮かぶ島のように見え、実は潮が引けば陸続きで歩いて渡れるという、あの幻想的な修道院です。その周辺のレストランや土産店では、今もシードルが人気商品の一つです。

 

そしてこの地方のシードルの楽しみ方として、最もポピュラーなのが「ガレット(Galette)」との組み合わせです。ソバ粉を使ったクレープ生地に、チーズやハム、目玉焼きなどをトッピングして、四角に包み込むあれです。私は初めてパリを訪れたとき、ノルマンディー出身のご夫妻が営む小さな食堂で、ガレットとシードルをいただいのをきっかけに、その虜となりました。

 

今でも五月の声を聞くと、無性にシードルが恋しくなります。ちょうど、私が通うワイン・ショップにもシードルが並ぶ季節となりました。そこで今回、イタリアとフランスのシードルを飲み比べ、またガレットとの組み合わせも比較して、家飲みのヒントにしたいと思います。

東京で本格的なフランス風ガレットとシードルを味わってみました

まずお邪魔したのは、東京にいて本格的なフランスのガレットがいただける神楽坂の「ル・ブルターニュ(Le Bretagne)」さん。正面のドアを取り払い、オープンデッキとつながる店内はとても開放的。清々しく気持ちのよいお店です。

まずはシードル選び。「辛口」「中甘口」「甘口」とありますが、ガレットとの組み合わせなら、とおすすめの「辛口(Brut)」をたのみます。

「ブルターニュ地方では、このような陶器でいただきますよ」と、やさしい店員さんが、小さなボウルにシードルを注いでくれました。ジュワッと白い泡が、器に溢れるほど立ちます。陶器には、グラスにはない温かみがあり、味わいが柔らかくなる気がしますね(笑)。

 

続いて、ガレットの登場。今回たのんだのはブルターニュ辺りで最もポピュラーな「コンプレ(complete)」。ハム、チーズ、卵をのせた伝統的なお味です。これをフランス人シェフがカリッと焼き上げてくれました。その味わいは…。

まずはカリッと香ばしい生地の風味が口に広がり、それからチーズとハムの塩気がまろやかに感じられます。また卵を崩して、そこに絡ませると、生地のパサパサ感を補って、潤いの食感に変えてくれます。これならエンドレスに食べられそう。素朴で、懐かしさえ感じさせる、何とも優しい味です。

 

そこにシードルを合わせます。リンゴの風味は感じられるものの、果実の甘みはなく、渋みとコクが強調され、苦味さえ感じます。語弊を恐れずにいえば、辛口ジンジャーエールにも似た印象。それが実に、ガレットの香ばしさとマッチして、粉物の料理をサラッと洗い流すようにしてくれます。絶妙の組み合わせですね。堅苦しくなく、温もりを感じるマリアージュ。目を閉じれば、モン・サン・ミシェルの修道院がたたずむサン・マロ湾の風を感じるようでした。

フランスに対抗! イタリアのガレット”フリコ”とは

次にイタリアのシードルを味わってみましょう。今回購入したのは、イタリアの最北端、オーストリアやスイスと国境を接するトレンティーノ=アルト=アディジェ地方産のもの。比較しやすいように、こちらも「辛口」をチョイス。イタリアでは、ワイングラスでいただくのが一般的です。

味わってみると、イタリアのシードルのほうが、より果実味を感じます。甘みはないものの、苦味や酸味がまろやかで、リンゴの香りがしっかり残る印象です。一方で、フランス産は渋みとコクがより強調されていましたね。

 

さて、イタリアには、先ほどのフランス風のガレットはないのですが、北部に「フリコ(frico)」と呼ばれる伝統料理があります。これは別名「フリウリ風ガレット」とも呼ばれる一品。フリウリとは、トレンティーノ=アルト=アディジェ州の東隣にある、フリウリ=ヴェネツィア=ジュリア州の一地域のこと。そのガレットは、ジャガイモで作ります。そのレシピはとてもシンプル。私もイタリア滞在中にお世話になった大家さんに教えてもらいました。今回自宅で再現してみたので、ご紹介しましょう。

シードルをより美味しく味わうための家飲みメニューを作ってみました

材料2人分は、こちら。

ジャガイモ1個, タマネギ1個、ピザ用チーズ100~150g程度(好みで調節)

実は、このフリコを作るとき、地元では「モンタジオ(Montasio)」というフリウリ地方伝統のハードチーズを使います。ただ、このチーズは日本では手に入りにくいので、とろけるチーズで代用します。

まずは、ジャガイモの皮をむき、写真のように薄切りにします。タマネギも同じく薄切りにしておきます。

 

それらを、オリーブオイルとともにフライパン(またはテフロン加工の鍋)で10分程度炒めます。

油がなじんできたら、塩とコショウで軽く味を付けます。ジャガイモがしんなりしてきたら弱火にして、チーズを入れます。

チーズが溶けて、クツクツと煮立ったら、木ベラで混ぜながらさらに火を通していきます。15分から20分ぐらいゆっくり煮込むようにします。

ジャガイモが柔らかくなり、ヘラでも簡単に潰せ、やがてペースト状になったならば、一度別の皿に上げて休ませます。

このとき、ジャガイモをさらにスプーンなどで潰してもかまいません。ジャガイモのきめが細かくなると、出来上がりもよりガレット風になりますよ。

 

さて粗熱が取れたら、このペーストをもう一度フライパンに戻します。

 

私は今回、厚めに仕上げるために、一回り小さめのフライパンを使います。こうすると、側面まで焦げ目がしっかりついて、サクサク感が出ます。もし大きめのフライパンに移せば、薄く広げることができるので、クレープ状の仕上がりになります。お好みで調節してみてください。

 

蓋をして、焼き上げていきます。片面1分程度。

ひっくり返して、両面に焦げ目が付けば、出来上がり。

今回は生ハムをトッピングして、イタリア風に仕上げてみました。

さて、今回はこのフリウリ風ガレットにイタリア産シードル(ワイングラスのほう)とフランス産シードル(タンブラーのほう)の両方を合わせてみます。

フリウリ風ガレット「フリコ」は、フランス風のものに比べて、チーズの風味が強調されます。またジャガイモの食感が残るので、甘みさえ感じます。そこには、やはりイタリア産シードルの柔らかな果実味が合います。

 

一方、フランス産シードルは酸味と渋みがしっかりあります。それには生地にそば粉の香ばしさが残る、フランス風のガレットがしっくりくると思います。「同じ産地の料理とワインを組み合わせる」という、イタリア料理の基本がここにも現れていました。初夏のさわやかなひとときに、ぜひお試しください。

 

※記事の情報は2018年5月15日時点のものです。

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