北アルプスの麓でとことん葡萄のポテンシャルを引き出すワイン造り。あづみアップルスイス村ワイナリーを訪ねました。

信州安曇野、9月。葡萄畑は収穫の真っ盛りでした。

美しい北アルプスを間近に臨み、豊かな自然環境に恵まれた安曇野に、あづみアップルスイス村ワイナリーを訪ねました。同社は1988年、「JAあづみ」を母体に、地元の農家で造ったリンゴをジュースに加工する会社として誕生しました。その後、醸造免許を取得してワイナリーを設立。現在は「スイス村」という、観光牧場やドライブインのあるレジャー施設の敷地内でワイナリーを営んでいます。醸造担当の小栗隆さんにお話を伺いました。
あづみアップルスイス村ワイナリーの葡萄畑
斜面の葡萄畑は北アルプスを間近に臨む

果実栽培にはうってつけの土地

醸造担当の小栗さん
醸造担当の小栗隆さん
安曇野のテロワールとはどんなものですか?

小栗:このあたりは日照時間が長くて、朝晩の寒暖差が激しいのが特徴です。葡萄に限らず果実にとっては、とても適した気候で、色づきもよく、糖度も高いものが収穫できます。
葡萄
契約畑でたわわに実る竜眼
今年の葡萄の出来はどうでしょう?

小栗:そうですね、今年の夏はとても暑く、雨も少なかったので良い葡萄が獲れました。ちょうど良い時期に寒暖差が来て、糖度も上々です。さらに秋雨の前に収穫できたのも幸運でした。秋雨にあたってしまうと病気が増えてしまうんです。凝縮感のある良い葡萄で仕込みが出来ています。

この土地の葡萄の特徴を素直に

ワイン蔵
樽熟成を行うワイン蔵。瓶熟成もここで行われている
どんなワインを目指していますか?

小栗:ひと言で言うと、安曇野の畑の特徴を活かしたワインです。なるべく素直にこの土地の葡萄の特徴を出せるように、あまり変な手を加えずに造るのが大きな方針です。また、葡萄の収量も抑え、農薬もできるだけひかえて栽培しています。特にピノロワールなどは病気も出やすいんですが、悪い粒をすべて手で取り除き、手仕込みでワインを造っています。それと、このあたりは気温が低いので、葡萄も完熟までに時間がかかります。そこで完熟前に収穫して仕込むんですが、そのために独特の土臭さといいますか、自然のミネラル感のある味わいになります。それがまた、この土地らしいワインの味になっていると思います。
発酵タンク
じっくり発酵させるため、北アルプスの伏流水を掛け流し、冷やしている
ワインの仕込みの特徴は何かありますか?

小栗:全房発酵(ホールバンチ)をしっかりやる、というところが特徴です。普通、白ワインは果汁のみを使うんですが、皮や花梗(かこう)の成分も抽出して、できるだけ葡萄のポテンシャルを引き出したいと思っています。赤ワインでは一次発酵と「醸し」にじっくり時間をかけて3週間ぐらい。普通だちょっとやり過ぎ、ぐらいですが、うちの場合はこれがちょうど良いと思っています。タンクをかき混ぜながら、低温でじっくり発酵させることで、葡萄の皮や花梗といった葡萄のすべての成分をしっかり抽出したいんです。そのため、最初はちょっと青臭い感じもするんですが、樽熟成を経るとそれが良いアクセントになってきます。
発酵中のワイン
醸し中の赤ワイン。皮や花梗の成分もしっかり抽出する

自慢のワインたち

ワイン3種

あづみ ドゥジェム ソービニヨン・ブラン

小栗:まず、白ワインです。安曇野で栽培されたソーヴィニヨン・ブラン100%で造っています。すっきりしたフルーティな、甘い香り、そして、しっかりした酸味が魅力です。刺身やスモークサーモンはもちろん、鳥の揚げ物など、脂っこいものにも良く合います。このあたりの郷土料理で鳥の山賊揚げというのがありますが、これにちょっとレモンを多めにかけていただいたりすれば、相性は抜群です。後味はちょっと酸味が残る爽やかな味わいです。
あづみ ドゥジェム ソービニヨン・ブラン

ピノノワール プルミエ三郷

小栗:
安曇野のピノ・ノワール100%の赤ワインです。葡萄を房ごと、粒ごと、潰さずに漬け込んで香りや味をしっかり抽出しました。三週間という長い醸し期間をとり、樽熟もしっかり行っています。ピノノワールらしい、優しいタンニンで、しかもしっかりした味わいです。合わせる料理は、意外に、出汁の効いた煮物と抜群の相性です。鰹の出汁と樽熟の香りが良く合います。あるいは、スモークした肉や魚とも相性は良いと思います。
ピノノワール プルミエ三郷

JA母体で地元に寄り添うワイナリー

JAさんが親会社ということでメリットは?

小栗:最大のメリットは原料の調達です。葡萄の作り手の顔が見えますし、その期待に応えられるよう、こだわりのある造りができます。畑から醸造まで一貫して見られる、というところが良いですね。その上で、利益主義ではなく、こだわったワイン造りが行えるということが良いと思っています。また、葡萄農家さんも高齢化が進んでいますから、積極的に支援していきたいと思っています。これからも、地元の農家の皆さんと一体となって、ここ安曇野の葡萄の良さをとことん引き出した良いワインを造って行きたいと思います。
葡萄の収穫
あづみアップルスイス村ワイナリーは、地元に根ざし、地元に寄り添うワイナリーです。近隣の中高生の体験学習や、農業高校で講師を引き受けたり、といった、地元への貢献も積極的に行っています。安曇野のテロワールを凝縮したワイン。ぜひ一度、味わってみてください。

※記事の情報は2018年10月22日時点のものです。
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