イタリア人エキスパートに聞いた! 新酒「ノヴェッロ」と本場の楽しみ方(2)

11月に解禁になる新酒は新鮮さが命。でも、勢いで買いすぎて、余ってしまうこともありますよね。本場イタリアではどうしているのでしょうか?

ライター:京藤好男京藤好男
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ブドウは同じでも、異なる味を生み出すノヴェッロの製法とは

イタリア北西部リグーリア州出身の友人ガブリエーレ・レバリアーティさんは、私の大学での同僚です。日本でイタリア語を教えている彼ですが、実家はワイン用のブドウ園を経営しています。自らワイン造りをしたこともあるというガブリエーレさんに、新酒「ノヴェッロ」の楽しみ方をお聞きしました。
京藤さんとガブリエーレ・レバリアーティさん

京藤(以下K): リグーリアといえばジェノヴァという港湾都市が有名ですね。太陽が燦々と輝く、たいへん風光明媚な土地です。実家の農園ではどんなブドウを作っていますか?

ガブリエーレ(以下G): うちは中規模な家族経営で、地元のワインを作るためのブドウを生産しています。主に白ワイン用のヴェルメンティーノ、赤ワイン用のロッセーゼが中心ですね。

K: 新酒としては、どんなワインを?

G:「ロッソ・デル・ポネンテ・リグーレ(Il rosso del ponete ligure)」というワインを出しています。先ほどの、ロッセーゼというブドウを使っていますよ。

K: イタリアのノヴェッロのおもしろいところは、通常のワイン用のブドウで新酒を作ることですよね。

G: そうですね。ただ、通常のワインとは製法が異なるので、また違った味わいやニュアンスが楽しめます。

K: 製法というと?

G: 「マチェラツィオーネ・カルボニカ(macerazione carbonica)」です。ボージョレ・ヌーヴォーと同じ製法ですよ。

K: 日本では「マセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸漬法)」と呼ばれる方法ですね。もう少しわかりやすく教えてもらえますか?

G: 通常の赤ワインは、茎から外したブドウの粒と酵母をタンクや樽に入れてゆっくりと発酵させますが、この新酒の製法では、ブドウの枝や茎も一緒に樽に入れてしまいます。ブドウは上からの重みで勝手に潰れ、枝や茎にくっついている自然の酵母で、これまた勝手に発酵を始めます。すると、樽の中に炭酸ガス(CO2)が充満し、その影響で潰れていないブドウの内部でも発酵が進むのです。こうして、通常よりも早くワインになるのですが、熟成には向かず、新鮮なうちに飲み切らなければなりません。

K: 9月に仕込んだブドウを11月に出すのですから、2カ月弱という短い期間ですね。

G: そんな短期間でも美味しいワインができるのなら、熟成させたらなお美味しい(笑)。だから、ノヴェッロは毎年、占いでも読む気分で、ちょっとドキドキしながら飲んでいますよ。

イタリア流余ったノヴェッロの活用法

K: 日本ではボージョレ・ヌーヴォーが有名で、毎年この時期にたくさん売られています。つい買いすぎて、残ってしまうんですよね(笑)。

G: イタリアでも新酒はよく余ります。新酒の賞味期限は2カ月から3カ月と言われています。だから、クリスマスや新年のお祝いの時期にはまだ飲めるんですよ。なので、年末年始に親戚や友達が集まるときに、もう一度みんなで新酒を飲むこともありますね。

K: そんなときの飲み方は? 何か工夫していること、ありますか?

G: 時期外れのノヴェッロは、やや新鮮さに欠けますが、酸味が和らいで、味に丸みが出ています。そのようなノヴェッロはドルチェによく合います。ドライフルーツのパウンドケーキやクッキーがおすすめですよ。
ドライフルーツのパウンドケーキやクッキーとノヴェッロを合わせる
K: なるほど。食後のデザートに合わせるのも、いいアイデアですね。新酒なら飲み口も軽いですから、あまりお腹の負担にもなりませんよね。家飲みの締めに、使わせてもらいます(笑)。

G: もし3カ月以上経ってしまったときには、うちではよくリゾットを作ります。赤ワインのリゾットにするんですよ。

K: そうか。料理に使えば、もう賞味期限を気にする必要はないですもんね。

G: 赤ワインのリゾットはとても簡単ですよ。ワインの風味やコクが出るので、ブロード(出汁)なしでも作れて、手間いらずです。

K: 赤ワインのリゾットは、特に冬の寒いとき、温まりますよね。思い出したら、食べたくなりました(笑)。

G: それじゃあ、我が家のレシピを教えてあげますよ。シンプルだから、おうちで作ってみてね。
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