今が旬の天然イワナで作った「骨酒」は絶品だった!

漫画「美味しんぼ」の”日本全県味巡り”にも出てきたイワナの骨酒。アレを思う存分味わいたい…!と思い立ち、遠路はるばるイワナを釣りに。釣り好きにして酒問屋バイヤーの私が、念願の骨酒を無事味わいつくすまでのレポートをお楽しみください。

ライター:しのちゃんしのちゃん
メインビジュアル:今が旬の天然イワナで作った「骨酒」は絶品だった!

骨酒のためのイワナを求めて、はるばる700km

皆さんは「骨酒」(こつざけ)というものをご存知でしょうか? 山奥の民宿に泊まると、まれに夕飯のお膳に出されるアレです。丸焼きの鮎やイワナが入った鉢に熱燗を注いだものですが、魚のだしが日本酒に移ってなんとも香ばしくて旨いお酒になります。あまり日本酒が得意ではない人でも飲みやすいと思います。    

なかなか家庭で気軽に作るというものではないものですが、どうしても飲みたい! しかも骨酒の王様、イワナで! そこで、まさに今が旬のイワナを求めて、住んでいる名古屋から遠路はるばる700km、新潟県の渓流に行ってきました。    

※なお、渓流漁を釣るには、遊漁券が必要なので必ず釣具屋さんなどで事前に購入してから釣ってください。

いざ渓流へ

いざ渓流へ
釣り場までは大岩を越えて淵を渡り、渓谷を遡上。冬のあいだの積雪が残った雪渓が谷をふさいでいる箇所に何度も出会います。雪解け水で少し濁った川に手を入れてみると、まるで氷のような冷たさ! しかし、水は冷たくても5月です。日当たりの良い斜面には様々な草木が萌えていました。    

2時間ほど山歩きをしたところで、目の前に大きな滝が。さっそく滝壺に竿を出すと…なんと34センチの大物!
たぶんこれは滝壺の主でしょう
たぶんこれは滝壺の主でしょう。しかし、骨酒にはちょっと大きすぎます。罰が当たらないように主には滝壺にお帰りいただきました。

途中でちょっとブレイクタイム。
途中でちょっとブレイクタイム。
湧き水でコーヒーを沸かし、そこに生えていた山独活(やまうど)を少しだけ採って皮をむき、塩をふって生のまま奥山の春を味わいます。
帰り道には山菜「コゴミ」が生えていた
その後も順調に大小多くのイワナが釣れましたが、骨酒用と塩焼き用にちょうどいいサイズの2匹だけ持ち帰ります。帰り道には山菜「コゴミ」が生えていたので、おつまみ用に一握りだけ、山の幸をいただきました。

骨酒作り

小さい方は骨酒用、もう1匹は酒の肴に塩焼きにします。    

生臭くない骨酒を作るには、小さめ(15cm以下は持ち帰り禁止なのでご注意を)のイワナを使うこと。下処理をしたイワナをできるだけ時間をかけて焼き、しっかり水分を飛ばして中までカラカラにするのがおいしい骨酒作りポイントです。18cmほどのイワナが1匹あれば、日本酒2合から3合ぐらいの骨酒には十分です。今回は、家庭用の魚焼きグリルのごく弱火で、じっくりじっくり焼いてみました(少し焦げてしまいました…)。お酒がしょっぱくならないよう、骨酒用のイワナには塩をふらないで焼きます。    

に、焼きあがったイワナを大きめの深鉢に入れ、熱々に燗をつけた日本酒を注ぎます。骨酒用の日本酒は吟醸酒などの香りのある高価なものより、昔の二級酒規格などの一般的なパックやカップのお酒が向いています。燗をして少しアルコールが飛ぶので、できればアルコールが少し高めの16度前後で、魚の味を邪魔しない辛口の日本酒が向いていると思います。ちなみに今回は、釣りの帰りに買った糸魚川の名酒「根知男山」のカップ酒を使用しました。    

一緒に皿に乗っている付け合せは、山で採った「コゴミのおひたし」です。山菜の中でもクセがないので、さっと茹でて削り節と醤油をかけていただきます。

骨酒の味

骨酒の味
熱燗の中でイワナを泳がせること5分。焼いたイワナのエキスが出て、お酒が黄金色に染まりました。部屋中に香ばしい香りが広がります。    

私はここで、酒が冷めないように木製の片口に移しましたが、大人数の場合は、イワナの入った大きな器のまま回し飲みする方が野趣があって楽しいでしょう。    

美味しく飲むには、冷めないうちに飲むことです。待ちきれずにひと口飲むと、香ばしい香りが鼻に抜け、イワナの旨みが口に広がります。しっかり焼いたためか、まったく生臭くなく、日本酒というより日本酒をふんだんに調味料として使った「だし汁」のようです。    

本来、川魚の中でも清冽な谷奥に住むイワナは、クセが無く白身の淡白な魚だからでしょう。「イワナの骨酒」は久々に飲みましたが、やはり、これは日本酒の熱燗とはまったく違う飲み物ですね。少しアルコールが飛んでいるためか口当たりもよく、骨酒だけでどんどん飲めます。もう一匹のほうの塩焼きをつまみながらだとさらにうまい。箸休めのコゴミも最高です。

骨だけの骨酒

最初に作った2合はあっという間に飲み干し、今度は塩焼きで残った骨をもう一度こんがり焼いて”骨だけの骨酒”を作りました。
骨だけの骨酒
これこそ本当の「骨酒」ですね。これでも十分味がありました。

今年の夏には、鮎の骨酒を作ってみたいと思いますし、もっといろいろな魚で「骨酒」を試してみる予定です。イワナはなかなかハードルが高いと思いますが、家庭で手に入れやすい魚でも骨酒は楽しめます。皆さんもぜひお試しください!    


※記事の情報は2017年5月26日時点のものです。
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