ラズウェル細木『酒のほそ道』の再現レシピ《肴は本を飛び出して④》

「小説やエッセイ、漫画に出てきた食べ物をおつまみにして、お酒を飲んでみたい」 家飲み派の筆者がささやかな夢を叶える連載、今回は酒食漫画『酒のほそ道(ラズウェル細木・著)』からの再現です。

ライター:泡☆盛子泡☆盛子
メインビジュアル:ラズウェル細木『酒のほそ道』の再現レシピ《肴は本を飛び出して④》

20年以上愛読している呑兵衛のバイブル『酒のほそ道』



◾あらすじ
ラズウェル細木さんが描く『酒のほそ道』は、『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)で連載されている酒食漫画。1994年に第一話がはじまり、コミックスは現在45巻まで発売されている長寿連載です。

主人公は酒好きが過ぎるほど酒好きなサラリーマン・岩間宗達(いわま そうたつ)。

仕事中も今宵の晩酌に思いを馳せ、立ち飲み屋や小料理店、バーなどあらゆる店で、そしてもちろん一人暮らしの自宅でも旨い酒とアテを楽しむことが日々の糧で、時にウンチクをかたむけるのもご愛嬌。

そんな宗達は、季節感や酒場の雰囲気の楽しみ方、上司や部下、行きつけの店の人たちとのやり取りなどがどれも等身大なのが大きな魅力。多くの呑兵衛が「わかる!」「あーこの呑み方好き!」と膝をポンポン打ちながら読むことで知られています(私調べ)。

私は特に家飲みの話が大好きで、宗達(敬称略)からどれほどのレシピを教わってきたことか。

幕の内弁当をバラしてつまみにする、鯛のあらを使い尽くして呑む、野菜料理をいくつか作って残った野菜はカレーに(翌朝の食事用のはずが酔って手をつけるところまで)などなど、ツボにはまる家飲みの仕方をいくつも身につけてきました。

そう、私の家飲みラバーとしての成長の一歩前には常に宗達がいたように思います。

◾ここを再現  
今回も選定に悩みまくりましたが、『酒のほそ道』30巻から、身近なもので再現できてちょっとしたひと工夫が生きた3品をピックアップして再現しています。
「酒のほそ道」お品書き

◾お品書き

  • 白菜と豚しゃぶのサラダ
  • 野沢菜のピザトースト
  • タコ焼きポモドーロ

【再現レシピ①】白菜と豚しゃぶのサラダ

【再現レシピ①】白菜と豚しゃぶのサラダ
コタツを出した晩秋(?)の日に「それじゃコタツ出し晩酌はじめーっ」とグラスを揚げる宗達。中身は手軽な白ワイン。

それに合わせて「トーフ・カプレーゼ」「白菜と豚しゃぶのサラダ」「チキンソテーゆずコショウ添え」「野沢菜のピザトースト」と4品も作っているのがすごい。腰が軽い!

腰(と腹)の重い私はその中から2品を再現してみました。まずはサラダから。

ラズウェル細木 日本文芸社 『酒のほそ道』30巻「第22話 家ワイン・白」より
白菜は生のまま使うので準備がとても楽チンです。

豚肉は沸騰したお湯を少し冷ましてからゆっくりと火を通すとふんわり柔らかくなりますね。私は氷水で締めずにほんのり温かいくらいで食べるのが好きです。

味付けは塩、胡椒、オリーブオイル、レモン汁とシンプル。ちょうどカボスがあったのでレモンの代わりに使いました。

◾食べてみた
あっさりとした味付けがとてもいい感じ! 柔らかくて旨みのある豚肉と、シャキシャキとみずみずしい生の白菜を一緒に食べると味と食感のコントラストが絶妙で「ふわ〜」と声が出ました。

冷えた白ワインをキュッとやるとたまりません。

【再現レシピ②】野沢菜のピザトースト

【再現レシピ②】野沢菜のピザトースト
続いて「家ワイン・白」編から2品目。宗達は締めの一品として作っています。

ラズウェル細木 日本文芸社 『酒のほそ道』30巻「第22話 家ワイン・白」より
ご飯のお供という印象が強い野沢菜をパン&チーズ&マヨネーズと合わせるなんてちょっと想像がつかなかったのですが、再現してみたらその相性のよさに驚きました。

野沢菜はあえて不揃いにカットして歯ごたえの違いを楽しむのもいいかも。

◾食べてみた
実は最初の試作では、「チーズにマヨネーズも加えるって、味が濃すぎないかな?」と心配になり、チーズだけで作ってみたのです。

そうすると野沢菜の塩気が強すぎて、野沢菜VSチーズ! 対決ドン! みたいな感じになってしまったので、次は素直にマヨネーズも足しました。先輩を疑ってすみませんでした……。うう。

マヨネーズのマイルドな味とまろやかな酸味が野沢菜とチーズを巧くつなげてくれて、バランスがとてもいい。「締めというより立派なつまみだよ」と宗達も言っていますが、まさにその通り!

私はさらにつまみ度を上げるべくサンドイッチ用の薄い食パンを使い、耳は切り落として別でカリッと焼き、これもつまみにしちゃいました。

漫画では食パンを小さくカットしていましたが、そのままかぶりつくと野沢菜の香りがふわっと鼻をくすぐってくれてこれもまたいいものです。お好みでどちらでも〜。

白ワインにはもちろん合いますし、ハイボールやプレーンサワーとも絶対相性がいいと思われます。

【再現レシピ③】タコ焼きポモドーロ

【再現レシピ③】タコ焼きポモドーロ
お次は「家ワイン・赤」編から。

「長芋とチーズの磯辺焼き」「マグロの焼き霜オイルづけ」「タコ焼きポモドーロ」「チーズ&ジャムのブルスケッタ」とジャンルフリーな4品を作ったあげく、赤ワインと白ワインをミックスして「ロゼなんちゃって」飲みを満喫する宗達。

翌朝は見事に二日酔いだったようです。

ラズウェル細木 日本文芸社 『酒のほそ道』30巻「第24話 家ワイン・赤」より
宗達曰く「赤ワインとしょう油味ってのがこれまた相性がいいんだよな」だそうで、全ての品に醤油を使っています。トマトジュースに醤油を入れるのは初めての体験でちょっとドキドキしました〜。

◾食べてみた
トマトソースを吸って1.3倍くらいにふくらんだたこ焼きがなんだか愛おしい。そしてお得な気分!

たこ焼き自体にクセがないので、トマトソースともすんなり馴染んでいます。うん、これは赤ワインに合うわ!

軽く煮詰めたので醤油の香りは飛んでいて、コクだけが残っています。玉ネギのシャキシャキ感も効いてる〜。ほんと、どのレシピも絶妙です。

これまで冷凍たこ焼きは「粉山椒&だし醤油」「酢&黒胡椒」で食べるのがお気に入りでしたが、もうちょい手間をかければこんなに美味しいものができると知ったのは大きな収穫。これもローテーションに加えたいと思います。


***

いつもはなんとなく真似していた宗達の家飲みレシピ。改めて再現してみると、本当に酒飲みならではのひとひねりが効いていて、かつ簡単という素晴らしいものでありました。

また時間ができたら、全45巻を読み返しながら次は何を再現しようか熟考してみますね。 いつか第二弾、第三弾もできたらいいなぁ。

※記事の情報は2019年11月5日時点のものです。

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