花福こざる『豆腐百珍 百番勝負』の再現レシピ《肴は本を飛び出して②》

「小説や漫画に出てきた食べ物をおつまみにして、お酒を飲んでみたい」 家飲み派の筆者がささやかな夢を叶える連載、今回は食漫画『豆腐百珍 百番勝負』から「草の八杯豆腐」「冬至夜(とうや)とうふ」「炒りとうふ」の3品を再現します。

ライター:泡☆盛子泡☆盛子
メインビジュアル:花福こざる『豆腐百珍 百番勝負』の再現レシピ《肴は本を飛び出して②》

江戸時代の豆腐料理を100品(!)再現 『豆腐百珍 百番勝負』



◾あらすじ
花福こざるさんの『豆腐百珍 百番勝負』は、江戸時代のベストセラー料理書『豆腐百珍』に登場する豆腐料理を実際に100品すべて再現したという力作です。

しかも再現するだけではなく、「事の次第を面白おかしくマンガにいたせ」と編集者から“下命”されてしまったのだからたいへん。 「尋常品」「通品」「佳品」「奇品」「妙品」「絶品」の6種類に分けられた100品を、細かい分量やレシピが表記されていない読み物的なお手本を元に奮闘するこざるさん。

「豆腐を細く切って酢につけて結ぶ」という「結び豆腐」は幾度チャレンジしても成功に至らず、泣く泣く「天狗やカッパじゃないとできないんだ」と結論づけたり、豆腐10丁にお茶一斤(約600g)というとんでもない分量が指示された「茶とうふ」をなんとか現実的な量で再現するも、その味は「お茶も豆腐もだいなしだーーーっ」と叫んでしまうほどのものであったりと、涙(と笑い)なしでは読めないほど、波乱万丈な豆腐道を歩んでいかれます。

もちろんハズレばかりではなく、こざるさんや周りの人々がうまいうまいと舌鼓を打つシーンもちゃんとあって、そんなページではこちらまで思わずニコニコしてしまいます。

シンプルでコミカルなタッチのイラストとリズミカルなストーリー展開がとても読みやすく、100品の重圧を感じることなく読み進めることができました。

◾ここを再現
今回は、悲喜こもごもな100品の中から「これで飲みたい!」「家飲みで簡単に再現できそう」と選びぬいた3品を再現してみます。
再現した3品

◾お品書き

  • 草の八杯豆腐
  • 冬至夜(とうや)とうふ
  • 炒りとうふ

【再現レシピ①】草の八杯豆腐/尋常品

草の八杯豆腐/尋常品
「くさ」ではなく「そう」の八杯豆腐。『豆腐百珍』には「草の○○」「真の○○」という品名がしばしば登場します。この区分は「料理にも書道のように真、行、草があるんだって」という作中の解説に添えて、精進料理の本膳を「真」、懐石料理を「行」、割烹料理を「草」と分けたものによるとこざるさんは描いています。

「八杯」たるゆえんは、木綿豆腐をうどん状に切り、水6、酒1、醤油1の計「8杯」の調味料で煮るからなのだそう。 それに葛でとろみをつけ、大根おろしをのせれば完成。

花福こざる イースト・プレス 『豆腐百珍 百番勝負』より
再現の再現では、こざるさんの「水の代わりに出汁汁にするとより良し」のコメントを活かして、というか安易さを求めて白だしを使い豆腐を煮ました。八杯の意味だいなし〜〜〜。ごめ〜〜〜ん。ちなみにわざわざ葛も買うことをせず、片栗粉で代用させていただきましたよ。だってカンタンに作って早く飲みたいんですもの。

◾食べてみた
うどん状になった豆腐をすするように食べるというのが斬新です。そして、醤油の風味に大根おろしのあっさりとした味が合いますね。生姜のすりおろしをのせたらいいんじゃないかなとも思いましたが、このままの淡味を楽しむのがよさそう。肌寒くなってきたらさらに美味しく味わえると思います。

【再現レシピ②】冬至夜(とうや)とうふ/奇品

【再現レシピ②】冬至夜(とうや)とうふ/奇品
京都の大徳寺では冬至の夜に皆で食したとされる豆腐料理だそうです。大徳寺バージョンは味噌煮込みとのことですが、こざるさんが再現したのは酒・醤油で煮るというものでした。

花福こざる イースト・プレス 『豆腐百珍 百番勝負』より
豆腐は表面の布目を削ぎ、四方を切り落として八角形にします。厚さを1.5cmほどにして酒と醤油で煮るというのが本来のレシピ。「味、濃すぎでは?」と心配になり、先に紹介した八杯豆腐と一緒に白だしで煮てしまった筆者をあなたは責めるでしょうか。それとも「合理的で良し」と褒めてくれるでしょうか。すみませんすみませんズボラで。

さてこちらのお味付けは、最初に切り落とした豆腐のかけらと胡麻をすり混ぜて煮上がった豆腐にトッピングするだけ。

実食したこざるさんが「もっとゴマいっぱい入れるといいかも」とコメントしてらしたので、最初から豆腐と同量くらいのすり胡麻を加えました。すり鉢であたるのをぐっと簡易化し、豆腐と胡麻をビニール袋に入れてモミモミ〜。ぽってりとした胡麻ソース的なものが出来上がりました。

◾食べてみた
トッピングが白和えの衣をそのまま食べている感じで、豆腐好きにとってはかなりいい感じです。温かい豆腐と合わさるとどんどん豆腐の味が濃くなっていくグラデーション加減もなかなかオツ。「禅味」なんて言葉が頭に浮かんじゃいます。

【再現レシピ③】炒りとうふ/妙品

【再現レシピ③】炒りとうふ/妙品
こざるさんの仲良し漫画家・くるねこ大和さんと一緒に再現する回。豆腐を焼く係、トッピングを作る係と手分けして作っています。淡味、禅味と続いたのでここいらで油っけのあるものが欲しいところ。
 

花福こざる イースト・プレス 『豆腐百珍 百番勝負』より
豆腐は適宜カットし表面を焼き付ける。別の鍋に青のりを入れて胡麻油を注ぎ弱火で炒り、醤油で味付けして豆腐の上にトッピング。青のりが焦げやすいので、目を離さないよう注意が必要です。醤油を加えるとジュッと香ばしいかおりが立ち、食べる前から喉が鳴りました。

◾食べてみた
これはとてもよいおつまみです! 胡麻油と青のりのしっかりとした香り、醤油の香ばしさが見事にマッチ。あるようでない組み合わせの妙に膝を打ちたくなります。こんなカンタンなのに手間をかけた味がする〜。こざるさん、くるねこさん共に絶賛されていたのに納得。

トッピングするのではなく、最後に豆腐も青のりの鍋に入れて全体にまぶしたらさらにまんべんなく香りを楽しめそうです。次はそうしよう。

・・・・・・

いつも何気なく食べている豆腐も、ちょっと視点を変えると立派なおつまみになるのだなぁと感心させられました。昔の人は限られた材料の中でよくぞこれだけの工夫をしたものです。

古の豆腐料理人と、わかりやすく再現してくれた花福こざるさんにお礼の盃を!

※記事の情報は2019年9月4日時点のものです。
 

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