第1回「つまみになる駅弁を探せ!」選手権(東京駅編)

旅のお供に欠かせない「駅弁」。夏休みで旅行や帰省などで駅弁を買う機会も増える時期ですね。しかし、種類が多すぎて迷ってしまい、結局いつも同じもの…という人も多いとか。ならば! 美味しいのはもちろん「つまみ」として考えたときに最適な駅弁はどれか、本気で食べ比べしてみました。

ライター:nonnon
メインビジュアル:第1回「つまみになる駅弁を探せ!」選手権(東京駅編)

お酒好きによるお酒好きのための駅弁選び。審査委員はこのメンバー

「つまみ」駅弁選手権の審査員は「さけ通信」編集長、酒文化研究所の山田聡昭さん、バイヤーズレポートでおなじみの青田俊一さん、そして、「おつまみレシピ」のメニュー開発とコーディネートを担当しているフードコーディネーターの井上陽子さんの3名。それぞれの駅弁の好みは

山田: 飲むお酒、移動時間によって駅弁を選ぶ
青田: ご飯少なめ、おかず多めが好み
井上: 見た目の美しさ、サプライズがあるお弁当が好み
左から山田さん、井上さん、青田さん
左から山田さん、井上さん、青田さん

エントリーしたのは13種類

今回は「東京駅で買える」駅弁からチョイス。東京駅で売られている駅弁は300種類以上あるとか。その中から、「つまみになりそう」という目線で、肉系、海鮮系、幕の内系、定番系からそれぞれ3~4種類をチョイスしました。

ボリュームと食べ応えの肉系

ボリュームと食べ応えの肉系
1.「串くら焼き鳥弁当」1280円(税込)
京都に本店を構える焼き鳥店のお弁当。京都ならではの素材、技法にこだわっています。つくね、ねぎま、ももなど4種類の焼き鳥、生麩や万願寺とうがらしなどが入った大人の味。

2.「牛肉どまん中」1250円(税込)
山形県産米「どまんなか」をふっくら炊いたごはんの上に特製のタレで味付けした牛そぼろと牛肉煮をのせた、ボリュームたっぷりの駅弁。

3.「まい泉丸の内東京駅舎三階建て弁当」972円(税込)
東京駅限定の三段重ねの駅弁。まい泉の代名詞「かつサンド」、かつ丼、2色そぼろ丼の3種が一度に食べられるうれしいセット。

激戦の海鮮系

激戦の海鮮系
4.「ますのすし」1400円(税込) 
富山名物「ますのすし」。脂ののったマスの旨味を「押し」の製法でご飯に染み込ませているとか。ほどよい塩加減と笹の香りで食が進みます。お土産としても人気。

5.「えび千両ちらし」1300円(税込)
一見すると「玉子焼き弁当?」と思いますが厚焼き玉子の下から海老や鰻、穴子が出てくるサプライズ弁当。上品な味付けで人気急上昇とか。

6.「伝承 鯵の押し鮨」1280円(税込)
大正2年から販売されているという歴史ある駅弁。あじの半身を使い、伝統の合わせ酢でしっかりと〆ています。ていねいに作られた安定の味にファンも多し。

7.「深川めし」900円(税込)
あさりの出汁がきいたご飯に、煮穴子、あさりの煮もの、わけぎがのった、東京名物「深川めし」のお弁当。小なす漬、玉子焼きなど副菜もアクセントになっています。

やっぱり食べたい!幕の内系

やっぱり食べたい!幕の内系
8.「東京弁当」1650円(税込)
東京駅限定のお弁当で、セレクトの中では最高値。人形町魚久のキングサーモンの粕漬け、浅草今半の牛肉佃煮、築地・すし玉青木の玉子焼きなど、東京の老舗の味を詰め込んだ贅沢なお弁当。

9.「つまんでよし食べてよし酒肴弁当」1100円(税込)
その名の通り、合鴨スモークや炙り〆鯖、スモークチーズ、ポテトサラダなど酒のつまみにぴったりのおかずと押し寿司、巻き寿司などが入ったセット。

10.「神田明神下 みやび 懐石 花御膳」1200円(税込)
煮物、揚げ物、焼き物がすべて入った、これぞ幕の内という内容。一口サイズのご飯は、それぞれ違う味付けで食べ飽きません。

何度でも食べたい定番系

何度でも食べたい定番系
11.「チキン弁当」880円(税込)
1964年に発売が開始されたロングセラー駅弁。うす味のケチャップライスに、おかずは鶏のから揚げ、ポテトサラダ、スモークチーズ。シンプルながらバランスの取れた内容。

12.「崎陽軒のシウマイ弁当」830円(税込)
駅弁といえば、これ!という人も多い定番中の定番。1928年に売り出してから製法はほとんど変わっていないとか。シウマイ4個に筍煮、鮪照焼と全体的に茶色おかずが多く、酒のつまみとしては最適。

13.「だるま弁当」1000円(税込)
群馬県、高崎の名物「だるま弁当」。醤油味のご飯のうえに山菜きのこ煮、穂先竹の子煮、椎茸煮、鶏の八幡巻、こんにゃくなどの具材がぎっしり。ほっとする素朴な味わい。

いざ、実食!果たしてベスト3は?

いざ、実食!
13個の駅弁を実食。「見た目」「美味しさ」「つまみ度」の3つの項目で審査していただきました。

山田:まずは肉系の駅弁からいきますか。
青田:「牛肉どまん中」は味付けがしっかりしてワインにも合いそう。ただ、ご飯が多いかな。
山田:牛肉煮とそぼろ煮では味付けも違うし、小技が効いている。人気があるのは分かるな。

井上:まい泉の「3段弁当」は、色々食べたいという気持ちに応えてくれていいですね。パッケージも特別感があっていいですね。
青田:まい泉のカツサンドは、つまみにはテッパンですよ。

山田:串くらの「焼き鳥弁当」はいろいろな串が食べられるし、見た目もキレイ。山椒と七味がついているのも気が利いていていいね。
 
海鮮系の「えび千両」は初めて食べました。
井上:海鮮系の「えび千両」は初めて食べました。玉子焼きの下に具材が隠れているのサプライズがあっていい。食べる楽しみがありますよね。
青田:押し寿司系の「あじの押しずし」「ますのすし」は美味しいけど、つまみと考えるとやはりご飯が多い(笑)
井上:「ますのすし」は久しぶりに食べましたが、ほどよい塩加減なので、私はお酒にのつまみになると思いました。量は多めですが残ったら持ち帰ることもできるし。
山田:「深川めし」はあさりがたっぷりで、ねぎやしょうがの風味もしっかり感じられる。
青田:炊き込みご飯も味がしっかりついているので、おかずが少なめでもおつまみになりますね。これならご飯が多くても大丈夫かも。

井上:幕の内系では「東京弁当」の煮物が本格的で驚きました。冷凍野菜ではなく、ちゃんと下ごしらえされたものを使っていると思う。
山田:キングサーモンの粕漬もいいよね。お弁当の焼き魚はパサつきがちだけどこれはしっとり。
青田:「つまんでよし食べてよし酒肴弁当」もいいですよ。ご飯が押し寿司や巻物になっていて工夫されている。まさにつまみになるお弁当ですね。
 
定番系の「チキン弁当」はバランスがいい。
山田:定番系の「チキン弁当」はバランスがいい。程よい量のケチャップライスと、鶏のから揚げで、1時半くらいの移動の時にちょういどいい。
井上:移動時間によってお弁当を決めるんですね(笑)。

青田:崎陽軒の「シウマイ弁当」は出張には欠かせませんよね。
山田:シュウマイだけ買ってビール、というのもあるけど、匂いが気になる…という人にはお弁当がちょうどいいかも。間違いない味。

井上:「だるま弁当」は具材がたっぷりで、特に山菜の煮物が良かったです。お酒に合いそう。
山田:どれも美味しかったですが、今回は「つまみ」として考えるのでそのあたりで採点が分かれそうですね。

つまみになる駅弁選手権 第3位「深川めし」

つまみになる駅弁選手権 第3位「深川めし」
山田:僕のNo.1はこれ。見た目、味、つまみ度、どれも満点です。お弁当としての完成度が高い。日本酒、ビール、チューハイ、白ワインといろいろなお酒と合わせられると思います。

青田:おかず多めが好きなのでつまみ度がやや低めですが、味は素晴らしい。ふっくらと煮られたあさりが最高です。日本酒と合わせたいですね。

井上:色味が少ないので見た目の点数を低くしました。ただ、味、つまみ度は満点。駅弁とは思えない本格的な味わいに驚きました。あさりたっぷりで贅沢ですね。

つまみになる駅弁選手権 第2位は「東京弁当」

つまみになる駅弁選手権 第2位は「東京弁当」
山田:会議で出てくるようなしっかりした幕の内。東京の名店の味が少しずつ楽しめるのもいいし、味は満点。品数が多いですが長旅だったらちょうどいいかも。ビールや日本酒を飲みながらちびちび食べたいですね。

青田:味、見た目は満点。少しずつ入ったおかずがお酒にはぴったり。ご飯があまりそうかなと思ったので、そこがマイナスポイントでした。いろいろな味が楽しめるので日本酒と合わせるとよさそう

井上:私はこれが最高得点でした。煮物やしぐれ煮などそれぞれの素材が大きめで高級感があります。「お品書き」がついているので、それを読みながら食べるものも楽しい。お値段は高めですが、たまの贅沢と思えばいいですね。

つまみになる駅弁選手権 第1位は「串くら 焼き鳥弁当」

つまみになる駅弁選手権 第1位は「串くら 焼き鳥弁当」
山田:焼き鳥を串から外して並べているところや一味や山椒、焼き鳥のたれが別添えになっているのもつまみ度が高い。味を変えながら楽しめますね。ほとんどのお酒と合うと思いますが、白ワインを飲みながら…というのも良さそうです。

青田:つくねやねぎま、梅風味など味が多彩で食べ飽きませんね。玉子焼きや万願寺とうがらしなどのおかずもつまみにぴったりの味つけ。ビールと合わせたいですね。

井上:盛り付けがいい。2色の生麩田楽や万願寺とうがらしが入って、色が地味になりがちな駅弁に彩りを添えています。本格的な出汁巻き玉子が気に入りました。焼き鳥のタレが別添えになっているので味の調節もできますね。

つまみになる駅弁の法則とは?

つまみになる駅弁の法則とは?
13種類の駅弁を食べ比べてみて、つまみとして考える駅弁とはどんなものなのか、審査員の感想をお聞きしました。

山田:僕はどんなお酒を飲むか、電車に乗っている時間などで駅弁を選ぶので目的によってベストなものは違ってきますね。おかずがたくさんある幕の内系は長時間の移動に、軽めのものは短めの移動にと分けています。今回、改めて食べ比べてみて驚いたのは、全体的に薄味で料理としての完成度が高いこと。味が濃すぎないほうがお酒にも合うし、工夫されているなと感じました。

青田:移動の時間によって駅弁を選ぶのは僕も同じです。おかずが少ないと東海道新幹線なら東京から静岡の手前あたりで終わってしまうので(笑)。今回、初めて食べましたが酒のつまみを意識した「つまんでよし食べてよし酒肴弁当」が気に入りました。これなら結構遠くまで行けそうです。

井上:「ますのすし」や「深川めし」など昔からある駅弁のおいしさを再確認しました。素材を活かす絶妙な味付けになっていて、少しずつ味も進化しているのかなと思いました。


「これはつまみにいいかな?」と考えながら駅弁を選ぶのも楽しそうです。旅行や出張のときだけでなく、自宅で駅弁飲みするのもいいかもしれませんね。


※記事の情報は2018年8月6日時点のものです。
 
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