最新!家飲みクラフトビール図鑑②ピルスナー編

お仕事後やスポーツ後の喉にゴクゴクと流し込みたい、爽やかな黄金色の飲み物と言えば、やっぱり「ピルスナービール」ですよね。いまやビールの代名詞ともいえる人気のピルスナーですが、長いビールの歴史から見れば実は、“新入生”なんです。ピルスナーに関するアレコレを知って飲むとおいしさ倍増。いつもの家飲みにワンランク上の楽しみをプラスしましょう。

ライター:コウゴアヤココウゴアヤコ
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ピルスナーはチェコのピルゼン生まれ

ピルスナーとは、優しい麦芽の風味と、ホップの爽快感が特徴の黄金色のビールです。日本の大手メーカーも長年このスタイルのビールを提供しており、私たちにとっては馴染みのあるスタイルですが、ドイツ生まれと思っている方も多いのでは? 実はチェコのピルゼン(プルゼニ)で、南ドイツの醸造家が「ラガー製法」で造ったビールが、ピルスナーの始まりなのです。

ピルゼンのあるボヘミア地方は、ホップの名産地。13世紀頃からビールが造られていました。ところがその頃のビールの味はひどいものだったとか。そこでチェコの醸造家たちは、当時から最先端の醸造技術を持っていた南ドイツに学ぶべく、1842年に醸造家ヨーゼフ・グロルをピルゼンに招きました。グロルは早速ピルゼンにある材料を使って、南ドイツの技術でビールを醸造します。

同年10月4日、樽の中のビールを見ると、予想外のことが起きていました。本場南ドイツと同じ褐色と思いきや、黄金色の美しいビールになったのです。南ドイツの水が硬水であったのに対し、ピルゼンは軟水だったため、淡色ですっきりとした味わいのビールに仕上がったのでした。当時はビールに適した水の硬度など知る由もありませんから偶然の産物です。

このビールはピルゼンにちなみ「ピルスナー」と呼ばれ、たちまち人気者になりました。他の地方のピルスナーと区別するため「ボヘミアンピルスナー」とも言います。

以上がピルスナー誕生ストーリー。ビールは紀元前4000年のメソポタミアですでに飲まれていたと言われていますから、その長い歴史から見れば1842年生まれのピルスナーはまだまだ加入したての“新入生”ですね。
ピルゼンのビール醸造博物館に展示されている古いボトル
ピルゼンのビール醸造博物館に展示されている古いボトル

ピルスナーの先輩、「ラガービール」

ペールエールやIPA、ヴァイツェンなどのビールが常温に近い温度で発酵させる「エールビール」であるのに対し、ピルスナーは低温で発酵させ長期熟成する「ラガービール」の仲間です。

ミュンヘンなどの南ドイツでは15世紀ごろから、山や地下に穴を掘って氷を詰めた天然の冷蔵庫でビールを低温貯蔵させる「ラガービール」が造られていました。ラガーとはドイツ語で「貯蔵」を意味します。低温で発酵・熟成させることにより、すっきりとした飲み口になります。ラガー製法を用い、ピルゼンで造られたビールがピルスナーです。

ラガー製法以前のビールは、雑菌の繁殖を防ぐために殺菌作用のあるホップを多量に使用したり、アルコール度数を高くせざるを得ず、“重い”ビールが主流だったようです。

麗しき黄金色のビール、ピルスナー

ピルスナーをビール界のトップアイドルに押し上げたのは、ガラス容器の普及です。1845年に英国でかけられていたガラス税が撤廃されると、透明なガラス製の容器が安価で市場に出回るようになりました。

ビールの容器もこれまでの陶器から透明なガラス製になると、人々はビールの見た目の美しさにも注目し始めます。ピルスナーの純白の泡と黄金色の外観は人々を魅了しました。
ピルスナー

冷凍機の発明で世界中で醸造できるようになったピルスナー

もうひとつ、ピルスナーの飛躍を支えた技術革新がありました。ドイツ人のカール・フォン・リンデによる「アンモニア式冷凍機」です。発明以前は、冬の間に川から切り出した氷を穴倉に詰めた天然の冷蔵庫しかありませんでしたから、冷蔵施設を必要とするビール醸造所はこの冷凍機に大喜び。1873年に第一号がミュンヘンのシュパーテン醸造所に設置されました。これによりピルスナーは季節と場所を問わず醸造可能になり、世界中に伝播しました。

日本人はピルスナーがお好き?

日本初の醸造所は、明治2年(1869年)に横浜外国人居住区で設立されたジャパン・ヨコハマ・ブルワリーです。翌年にはノルウェー生まれのアメリカ人醸造技師ウィリアム・コープランドによってスプリングバレー・ブルワリー(キリンビールの前身)が開業します。

当時はエールとラガー双方のビールが造られていましたが、徐々にラガーが優勢になってきます。明治の半ばから日本はドイツを模範としたため、ビールもドイツのラガーに傾倒。1876年には、ドイツで修業した中川清兵衛が醸造長となり北海道開拓使麦酒(サッポロビールの前身)が設立され、日本人の間にもドイツのビール「ジャーマンピルスナー」が浸透しました。

日本は、高温多湿な気候。うすい味付けを好む食文化などからも、当時の日本人にはすっきりとしたラガーが口に合ったようです。
ピルスナー

続々誕生ピルスナーファミリー

チェコのピルゼンで生まれたピルスナーは「何杯でも飲み続けられる」と人気急上昇。各地に広まり、それぞれの土地で味わいが微妙に変化します。

ボヘミアンピルスナー
チェコで生まれたピルスナーの元祖。黄金色から銅色。チェコ原産の上品なホップの香りと苦みが印象的だが、麦芽のこうばしい甘みとのバランスが良く穏やか。

ジャーマンピルスナー
ピルスナーが南ドイツに里帰りして生まれた。色は淡い黄金色で、麦芽の風味は主張しすぎない。ドイツ北部ではホップの苦みやキレが強く、南部では弱い傾向にある。

ドルトムンター
ドイツ西部の街ドルトムント生まれ。ホップの香りや苦みは弱めで口当たりが軽く、マイルド。

ミュンヒナーへレス
ミュンヘン生まれ。色は淡く、麦芽のこうばしさと甘みが最初から最後まで優しく続く。ホップの苦みは弱めで、おだやかな味わい。

インターナショナルスタイル・ピルスナー
麦芽の甘みやホップの苦みは弱く、ドライな飲み心地。米やコーン、糖類などの副原料がしばしば使用される。

注ぎ方でピルスナーの味が変わる!

最近、「ビール注ぎ名人」が世間をざわつかせています。ビールスタンド重富(広島)の重富寛氏、「BIER REISE 98」(東京)の松尾光平氏などが有名です。名人が注ぐと一般的なピルスナーであっても、泡持ちや喉越しのスムースさが格段にアップ!  

でも毎度飲みには行けないよー、という方も大丈夫。あなたが「家飲みビール注ぎ名人」になってしまえばいいのです。ちょっとの手間でいつものピルスナーがワンランクアップしますよ。

★日本ビアジャーナリスト協会が推奨する「缶ビールのおいしい注ぎ方」★
1.よく洗ったきれいなグラスを準備
2.高い位置からグラスの壁にビールを当て、グラスいっぱいに泡が立つように注ぐ
3.泡が落ち着いて、泡4液体6ほどになるまで60~90秒ほど待つ
4.再びビールを注ぐ。低い位置から、ビールをグラスの中で対流させ泡を持ち上げるように
5.泡がグラスの上辺を超えてこんもりと盛り上がるまで注いだら完成!


実は缶や瓶のビールには強めの炭酸が充填されています。グラスに注いで炭酸が美しい泡を作ったときに時に、ちょうど良い口当たりになるよう設計されているのです。缶瓶に直接口を付けて飲むと、舌にピリピリと刺激を感じてしまうのは余計な炭酸を感じているから。透明なグラスに注ぎ、肌理の細かい泡とキラキラと輝く黄金色の液体を、目でも舌でも楽しんでください。

ピルスナーのおすすめ銘柄はこれ!

\日本のビールが生まれた街で伝統のビール造り/
横浜ビール ピルスナー
チェコ産最高級アロマホップをふんだんに使用し、華やかながらも上品な香り。チェコ伝統の製法で麦汁を糖化しており、カラメルのような麦の香ばしさも。雑味のないきれいな飲み口のボヘミアンピルスナーです。

横浜ビールは、初めて日本でビールが醸造された横浜の地でビール造りの歴史と伝統を大切に、飲む人の心に響くクラフトビール造りを目指しています。醸造所併設のレストラン「驛の食卓」では、横浜水源の地・道志村や地元横浜の食材を積極的に使用し、ビールに合う料理を提供。人との繋がりや地産地消を大切にする醸造所です。
商品名 :横浜ビール ピルスナー
メーカー名 :横浜ビール
生産地 :神奈川県
原材料 :麦芽、ホップ
アルコール度数 :6%


\木曽川水系の水で丁寧に作られた正統派ピルスナー/
金しゃちビール 青ラベル
明るい黄金色にきめ細かく豊かな泡が美しいコントラスト。華やかなホップの香りと苦味が感じられ、深い余韻を残しながらもすっきりとした喉越しが楽しめるジャーマンピルスナーです。

盛田金しゃちビールは愛知県犬山市で、厳選された原料と木曽川系の地下水を使用し、厳しい品質管理のもとにビールを醸造。本場のビールスタイルを守りながら、日本の風土、食文化や日本人の味覚に合った味わいを提供し、日本のビール文化の創造を目指しています。喉の渇きをいやすだけでなく、香りや味、色までもじっくりと味わえる商品ラインナップです。
商品名 :金しゃちビール 青 ラベル 瓶
メーカー名:盛田金しゃちビール
生産地 :愛知県
原材料 :麦芽、ホップ
アルコール度数 :5%


\ピルスナーはここから始まった!元祖のうまさ/
ピルスナーウルケル
濃厚かつクリーミーな泡。ザーツ産ホップによるスパイシーかつフローラルな香りが心地よく広がります。ホップの苦み、麦芽のまろやかな甘みが絶妙なバランスで、軽やかな飲み心地。 「ウルケル」とは元祖という意味。

1842年創業、世界で初めてピルスナーを造った街の元祖ピルスナーです。現在でもチェコ産の原料のみ用い、伝統的な醸造法を守って造られています。元祖としてまずは飲んでおきたい1杯。
商品名 :ピルスナーウルケル
メーカー名 :プルゼニュスキー プラズドロイ社
生産地 :チェコ
原材料 :麦芽、ホップ
アルコール度数 :4.4%

おすすめピルスナーに合うおつまみは?

横浜ビール ピルスナー × 焼き餃子  
地元を大切にする横浜ビールには、横浜中華街の料理をチョイス。爽快感たっぷりのピルスナーには、定番の焼き餃子を合わせます。 肉のうまみがジュワっと溢れたところで、ビールを一口。肉汁とまろやかに溶け合い、噛みしめる度に皮の甘さや、羽根のこうばしさが押し寄せます。ホップの苦みが口の中に残った脂を洗い流してくれ、またすぐに餃子とビールに手が伸びてしまいます。熱々と冷え冷えの温度差もたまりません。
ビールと餃子
金しゃちビール 青ラベル × 揚げだし豆腐  
上品な味付けの和食のポテンシャルを引き出すには、ホップの上品な香りをまとったビールが正解。鰹やアゴなどの魚系の出汁には、ボティがしっかりとしながらも主張しすぎないピルスナーがよく合います。

華やかなホップの苦みが揚げのこうばしさを引き立て、麦芽のほのかな甘みが出汁の豊かな風味と一体に。心地よい余韻が続きます。日本には出汁文化があったから、それによく合うピルスナーが広まったのではないかと思うほど。
揚げだし豆腐
ピルスナーウルケル × ポテトサラダ  
どんな食事にも合わせやすいピルスナーですが、そのビールが生まれた国の料理と一緒に食べるのが“幼馴染”的ベストカップルです。ジャガイモはチェコやドイツでよく食べられている食材。伝統料理のプレートには必ずと言ってもいいほど添えられています。  

麦芽の穀物感とジャガイモの甘みがシンクロ。ベーコンの塩気と脂がアクセントに。ホップの苦みがじんわりとやってきて、後を引きます。ポテトサラダはイモの形がゴロゴロと残ったもの、ベーコンや輪切りのソーセージが入っているものがよりお勧め。
ポテトサラダ
※記事の情報は2020年3月13日時点のものです。

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