信濃川日出雄『山と食欲と私』の再現レシピ《肴は本を飛び出して⑭》

「小説やエッセイ、漫画に出てきた食べ物をおつまみにして、お酒を飲んでみたい」 家飲み派の筆者がささやかな夢を叶える連載、今回は人気の登山&食漫画『山と食欲と私』からの再現です。

ライター:泡☆盛子泡☆盛子
メインビジュアル:信濃川日出雄『山と食欲と私』の再現レシピ《肴は本を飛び出して⑭》

山でも家でも美味しい、トーチバーナーでの“炙り” おつまみ


◾あらすじ
『山と食欲と私』は、WEBコミック『くらげバンチ』で連載中の登山&食漫画。主人公は、都会に住み休日は主にソロ登山を楽しむ“単独登山女子”のOL・日々野鮎美27歳。近場から九州、北海道の山へ登り、これぞと決めたご飯やおやつ、飲み物を味わうことを喜びとしています。

「メスティン」という飯盒で炊いたご飯で作るオイルサーディン丼や、フライドポテトのホットサンド、スパイシーチキンを添えた丸ごとトマトのジャンバラヤなどなど、すぐ真似できそうな簡単なものから、「これは凝ってる!」なんてものまで鮎美ちゃんの山ごはんは実にバリエーション豊富。

調理する姿は楽しそうだし、食べる様子はもっともっと楽し嬉しそうで、見ているだけで一緒に山に登ったような気持ちになれるのです。

作者の信濃川日出雄先生ご自身も登山や料理がお好きなようで、風景や食べ物の描写がとってもリアル! 映画を見ているような気分でぐいぐいっと画面に引き込まれるのもこの漫画の魅力です。「いつか私も鮎美ちゃんみたいに山でごはんを食べてみたいな〜」と夢見たりしてして。現実では山登りなんて夢の夢、な超インドア派で家飲み愛好家の私でさえも夢中にさせる、スゴ腕な登山漫画といえましょう。

◾ここを再現

信濃川日出雄 新潮社 『山と食欲と私』10巻 [炙って焦がして‼]より

■お品書き

  • 炙りカプレーゼ
  • 炙り白子
  • 炙りサーモン丼
作中には、山に登らず自宅などで「山っぽい食べ物」を楽しむシーンも登場します。これなら私も再現できる! と飛びついたのが、第104話「炙って焦がして‼」(単行本10巻に収録)。

同僚の結婚パーティのビンゴ大会で「トーチバーナー」をゲットした鮎美ちゃん。トーチバーナーとはカセットボンベに装着して使うバーナーのことで、炭に着火したり炙りものに使ったりと野外調理で重宝するアイテムのひとつ。

信濃川日出雄 新潮社 『山と食欲と私』10巻 [炙って焦がして‼]より
トーチバーナーを手に入れた日から、鮎美ちゃんは怪しげな“炙り神さま”に取り憑かれてしまいます。

信濃川日出雄 新潮社 『山と食欲と私』10巻 [炙って焦がして‼]より
手始めに「会社のミーティングルーム(なぜかバーカウンターがある)でお炙りなさい」とのお告げを受けて「焼き鳥缶親子丼チーズのせ炙り」を作り大成功するや、鮎美ちゃんの炙りたい欲は日に日に強まっていくのでした……。

信濃川日出雄 新潮社 『山と食欲と私』10巻 [炙って焦がして‼]より
炙って美味しそうなものはばんばん炙っていく鮎美ちゃん。

会社で、家で炙ったら、あとはそう。

信濃川日出雄 新潮社 『山と食欲と私』10巻 [炙って焦がして‼]より
というわけで、ついに山で炙りデビューを果たします。

信濃川日出雄 新潮社 『山と食欲と私』10巻 [炙って焦がして‼]より
これ絶対美味しいやつでしょ!

信濃川日出雄 新潮社 『山と食欲と私』10巻 [炙って焦がして‼]より
ほらほらやっぱり!

こんなの見ていたら、炙りたくなるに決まってる! というわけで、炙りサーモン丼を含む3品を再現してみました。

私はトーチバーナーをネットショップで購入しましたが、ホームセンターなどでも販売されているため気軽に入手できます。
トーチバーナーセット1
トーチバーナーセット2
トーチバーナーをカセットボンベにセットして使います。
トーチバーナー着火!
実際に炙る前に安全な場所で着火の練習をするのがおすすめ。最初はゴーッと音を立てる炎がちょっと怖かったです。

室内で使用する場合は換気に十分気をつけて、商品の注意書きをしっかりと読み正しく使用してくださいね。

【山と食欲と私再現レシピ①】炙りカプレーゼ

炙りカプレーゼ完成品
<材料>
・モッツァレラチーズ
・トマト
・フレッシュバジル
・エクストラバージンオリーブオイル
・塩

<作り方>
① 輪切りにしたモッツァレラチーズとトマトを交互に並べて炙る。
② バジルの葉をちらし、オリーブオイルと塩をかける。
炙り中のカプレーゼ
ご注意! アルミホイルまで炙ると溶けてしまうので、炎は食材だけに当てるようにしましょう。私はうっかりアルミホイルにのせてしまいましたが、食材は耐熱皿やバットに並べて炙るのが望ましいです。

■食べてみた
モッツァレラチーズのミルキーさに焦げ目の香ばしいアクセントがついて、味わいが深まります。トマトも加熱することで甘みが増していました。

炙りたてのほの温かいもの、冷めたもの、どちらも美味しかったです。パスタにのせるのもいいかも〜!

【山と食欲と私再現レシピ②】炙り白子

炙り白子完成品
<材料>
・タラの白子(できれば生食用)
・酒
・醤油
・お好みで、塩、ポン酢、刻みネギ、七味唐辛子など

<作り方>
① 白子は流水できれいに洗い、好みの加減に軽く茹でて冷水にとり、しっかり水気を切る。あらかじめボイルされたものを使う場合はこの手順は省く。
② 1に酒と醤油で下味をつけておく。
③ 2を炙り、お好みで塩やポン酢をふって薬味を添える。

■食べてみた
ほんのりしみた醤油が焦げる香りが食欲を誘います。

炙って少し硬くなった皮がぷつっと弾けると、中には半生でとろ〜りとした白子。これは冬のご馳走ですな〜。日本酒がいります。必ずいります。

【山と食欲と私再現レシピ③】炙りサーモン丼

炙りサーモン完成品
<材料>
・サーモン刺身
・ご飯
・すし酢
・塩
・レモン
・柚子胡椒

<作り方>
① ご飯にすし酢を混ぜて酢飯を作り、できればメスティンに詰める。なければ丼などでも。
② 1にサーモンの刺身を並べて炙る。
炙り中のサーモン丼
③ 粗塩をふり、レモンを絞り柚子胡椒を添える。

■食べてみた
回転寿司でもおなじみの炙りサーモン。間違いのない美味しさです。炙って溶けた脂が甘ーい。塩とレモンがキュッと味を引き締め、柚子胡椒がさらに風味をプラス(写真には柚子胡椒を入れ忘れていました。すみません!)。

酢飯なのでさっぱりと味わえるところがおつまみ向きですね。もうひと手間かけられるなら、酢飯に刻んだ大葉やゴマなんかを入れてもよさそう。

せめて気分だけでも、とベランダに人工芝を敷いて撮影&試食しました。景色のいいところで食べたらもっと美味しいんだろうな〜。

ちなみにこの話のラストでは、炙りサーモン丼を食べてテンションマックスになった鮎美ちゃんが続けて草の上でメスティンプリン(これまたうまそうなんだ)を炙ってキャラメリゼし、周囲の草にまで火をつけてしまいます。周りの人にも助けてもらって事なきを得たようですが、屋内外ともにバーナーを使うときは充分に気をつけないといけませんね。この教訓を忘れずに、これからも炙っていきましょう。

***

実は私め、以前からトーチバーナーを使用していて、市販の寿司やグラタンなどを炙っては楽しんでいました。
炙りお寿司
割引された寿司も炙れば一気にご馳走に! マヨネーズをのせて炙ったり、炙った後にバターをのせたりするのもおすすめです。
炙りヒラメ丼
ヒラメのエンガワを「づけ」にして炙った丼。脂とろっとろで歯がいらないくらいとろけましたよ〜。最高っ。

でも今回初めてカプレーゼや白子を炙ってみて、新たなる炙りの扉を開いたような気がしました。炙り神さまに取り憑かれすぎない程度に、冬の美味しい食材を炙って家飲みを充実させたい所存でございます。はい。

\これまでの再現レシピはこちら!/

※記事の情報は2020年12月4日時点のものです。
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